代表取締役社長 大賀 崇浩
九州保健福祉大学薬学部 茨木 寛之
福岡大学薬学部 延原 さくら
福岡大学薬学部 山浦 尭将
福岡大学薬学部 栗原 昌也
代表取締役社長 大賀 崇浩
九州保健福祉大学薬学部 茨木 寛之
福岡大学薬学部 延原 さくら
福岡大学薬学部 山浦 尭将
福岡大学薬学部 栗原 昌也
イノベーションを起こし、
薬剤師の価値を高める
Profile
大賀 崇浩(おおが たかひろ)
株式会社大賀薬局 代表取締役社長
1982年福岡県生まれ。東京理科大学経営学部を卒業後、三谷商事株式会社で営業職を務める。2008年に帰郷し、株式会社アトルで医療業界について学び、2009年、株式会社大賀薬局へ入社。店舗経験を積み、2011年より常務取締役として経営に携わる。2016年9月、代表取締役社長に就任。明治35年創業の基盤と信頼を生かしながら、チャレンジする社風を醸成。新しい価値を創造する「老舗ベンチャー薬局」として、九州一の企業を目指す。
大賀薬局ウェブサイト https://www.ohga-ph.com/
商社で学んだ仕事の極意
薬局の社長というと薬学部出身の方が多いですが、私は経営学部出身なんです。就職先は激戦の商社を目指しました。商社マンはかっこいいイメージがあったし、自分でビジネスをつくり上げる経験ができると思ったからです。
採用面接で気に入られて、運良く希望する商社に入ることができました。入社2年目、仙台支店で尊敬できる上司と一緒に仕事をしたことが、私の人生の分岐点になりました。豪快で人間的な魅力があって、男が惚れるような男でした。この上司からは社会人としての基本や営業のスキルだけではなく、オンとオフの切り替えや、人間関係の作り方など、人生で最も大切なことを学びました。このときに身につけた考え方は、今も自分の基盤になっています。「仕事人間は仕事がダメになったときに折れやすい。お前は趣味や恋愛、何でもいいから好きなことをしっかりと持っておけ。一本の矢であれば折れるが、三本なら折れない」って言われたんですよ。いろいろな世界を持っていることが、人間的な魅力となり、仕事にも活きてくる。当然、周囲のサポートも得られます。人からモテることの大切さに気付かせてくれました。私が当時トップシェアの営業成績を上げられたのは、この上司の教えのおかげです。
新しい挑戦を続ける 老舗ベンチャー企業
商社に数年勤めた後、父が経営する大賀薬局の経営を引き継ぐために退職。医薬品総合卸の会社に半年間勤めて医療業界の流通を学び、大賀薬局に入社しました。
ドラッグストアの店長や調剤薬局事業部の本部長を歴任し、2016年に社長に就任しました。先代の社是「奉仕こそ我らの務め」を生かしながら、さまざまな変革を進めています。
大賀薬局をひと言で表すと、「老舗ベンチャー薬局」。118年の歴史を持つ老舗企業ではありますが、常に新しい挑戦を続け、最先端の薬局でありたいという思いを込めています。
当社は1902年に曾祖父が起こした大賀商店から始まり、薬局業や問屋業のほか、カバン店や食器店など多様な業種業態を開発しながら歩んできました。もともと薬局のあり方に、決まった形はありません。長い歴史の中で、時代のニーズに合わせて変化してきたからこそ、会社が存続できたのだと思います。
まさに今、薬局はあり方を見直す時期にきています。これまでは医薬分業が進んできた背景があり、普通に営業していれば利益を出せる時代でした。これからは過去の延長線上に明るい未来はなく、革新的なイノベーションが必要なんです。イノベーションというのは、今あるものを組み合わせて新しい価値を生み出すこと。薬剤師と薬局の価値を高めていくことが大切です。
社員がチャレンジできる機会と環境をつくる
新しい価値を生み出していくためには、社員がチャレンジできる環境づくりが不可欠です。その一環として、今年からチャレンジ制度をスタートしました。希望する社員には、年に1回、自分がやりたいことや貢献できることなど、15分間のプレゼンテーションをする機会を設けました。アイデアは3~5個くらい採用し、選ばれた提案を実現できるよう、新しい部署の設立や人事異動にも反映していきます。
薬剤師としてのスキルアップも大切ですが、本人のキャリアアップのプランも尊重し、やる気のある人にはさまざまな仕事を経験してほしいと思っています。当社では、店舗開発に携わる薬剤師や採用・人事に携わる薬剤師が多数いて活躍しています。既にある社内ベンチャー制度(起業)の利用促進など、いろいろな発想を形にしていきたいですね。
薬を減らすことが薬剤師の使命
薬剤師の使命は、薬を減らすことだと私は考えています。必要のない薬が処方されているときは、医師にはっきり言うべきなんです。患者様のことを考えたら、当然不必要な薬は飲まない方がいい。しっかりとした知識やエビデンスを元に医師と対等にコミュニケーションを取れる薬剤師を育てなければならないと考えています。
患者様の薬を減らせるように、薬剤師や管理栄養士が生活習慣のアドバイスをして、病気予防のお手伝いをしていく。社内にいる他職種同士の強みを活かし、連携を進めていくこともやっていかなければいけないことです。さまざまなイノベーションにより、患者様や地域の皆様の役に立つことが、薬剤師自身の価値を上げることにもつながります。
こうした大賀薬局の想いを伝えるために、誕生したのが「薬剤戦師オーガマン」です。オーガマンの役目は「薬育」。処方された薬を最後まできちんと飲むことや、薬を減らすことの大切さなど、インパクトのあるキャラクターが言うことで、子どもから大人まで興味を持って聞いてくれる。私たちのメッセージを、オーガマンが着々と広げています。
福岡の地域に根差して貢献する企業に
現在当社は福岡を中心に100店舗以上展開しております。福岡に集中している一番の理由は、地域に貢献するため。地域の皆様にとって、ファーストチョイスの薬局でありたいからです。
地域を絞ることは、経営的にもメリットがあります。採用や商品の流通、移動費などのコストが抑えられ、その分新しいことにチャレンジしたり、患者様に還元したりできる。全国に100店舗あるよりも、福岡に100店舗あるほうが会社として絶対に強い。福岡から段階的に、九州で地域の皆様に愛されるナンバー1の薬局を目指していきます。
自治体や地元の企業と連携し、イベントの開催にも力を入れています。これも一つのイノベーションです。他の分野の企業と協力することで、衣食住を全てカバーし、ライフスタイルの提案をしていきたいですね。今年は、子育て世代を対象にした大規模なイベントをマリンメッセで行う予定です。
医療財政はこの先ますます厳しくなっていきます。今のうちから子どもたちに興味を持ってもらい、医療について一緒に考えていく機会をつくるべきです。その発信をオーガマンを通して薬剤師が担い、さまざまな取り組みと共に、地域を活性化していきたいと考えています。
モテる人になれ!
大賀薬局が求める人材は、モテるための努力ができる人です。男性からも女性からもモテる人は、内面も外見も魅力がある。どんなにイケメンでも、中身が空っぽだったらモテません。常に自分を磨いている人、個性があって信頼できる人には、人が集まってきます。
モテると仕事も成り立つんですよ。薬剤師が地域包括ケアの中心になるためには、患者様はもちろん、その家族や地域の人、医療従事者などさまざまな人から慕われないといけない。
身だしなみや清潔感、TPOに合わせたおしゃれも大事です。内面を磨くのは時間かかるけど、外見はファッションですぐに変えられる。見た目を諦めず、おしゃれ能力も高めてほしいと思います。モテるという要素は、仕事だけではつくれません。多くの人と出会い感化されること。人と違う趣味を持ったり、恋愛に没頭したり。さまざまな経験が魅力を育てます。失敗も素晴らしい経験です。外のコミュニティが人間の幅を広げます。お金は、活きた使い方をしてください。時間とお金をかけて経験したことは、自分の中に蓄積されて返ってきます。イノベーションというのは思いがけない組み合わせから生まれます。業界を越えた出会いや経験が、新しい価値=イノベーションを生み出すベースになるんです。
薬学部生へのメッセージ
国家試験はゴールではなくて、スタートです。国家試験の予備校みたいな大学生活にならないようにしてほしいですね。一生に一回しかない時期だからこそ、時間をうまく活用して、大学生のうちにやれることをやってもらいたいです。
薬学部は同じ環境の人ばかりになるので、いろんな学部の人や他の大学の人と一緒に学ぶ機会も大事だと思います。勉強も趣味も遊びも全力投球で! ぜひかっこいいモテ薬剤師になってください。
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福岡大学 薬学部 栗原 昌也
今回のインタビューで、大賀薬局は地域のために何をしなければならないかをよく考え行動している「地域に根ざした薬局」だと感じました。薬剤師の価値を上げるためにも、使命を果たしていくことの重要性にも気づくことができ、私もさらに「モテる」人間になるべく努力していきたいと思えました。
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福岡大学 薬学部 山浦 尭将
薬局運営だけに力を注いでいる会社がほとんどの中、薬局以外の仕事にも力を入れることのできる会社と感じました。新たに取り入れるチャレンジ制度をはじめとして、やりたいことを全力で実施できる環境が整っており、挑戦に対しての手を挙げやすい環境であることが非常に魅力的でした。
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九州保健福祉大学 薬学部 茨木 寛之
薬剤師の在宅訪問と営業チームの連携や、目先の売上にこだわらない本質的な医療の提供など、未来を見据えた取り組みに力を入れているのが印象的でした。また、経験の浅い社員でもさまざまなことに挑戦でき、自分の発想や努力がイノベーションになりうるという可能性に魅力を感じました。
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福岡大学 薬学部 延原 さくら
経営について学んだ社長だからこそ、新しいものを積極的に取り入れていく攻めの姿勢があり、薬局業界だけでなく他職種と関わることが柔軟な発想につながっていると感じました。オーガマンや健康フェアなどの地域に根ざした活動を通して、次世代の子どもたちへの教育に尽力していく姿に感銘を受けました。
編集後記
挑戦することに価値を見出す。企業の姿勢がその言葉一つひとつから滲み出していた。100年続く企業はほんの一握りといわれるが、まさに長寿の「老舗」でありながら「ベンチャー」のようなチャレンジシップの二刀流は、従業員に安心と成長と同時に提供している。薬剤師としての本質を確実に押さえながら、薬剤師の枠を越えていく。そんな贅沢な働き方を実現できる薬局の存在を発見する機会となった。
Dreamers編集長 田代 結城