代表取締役 中村 守男
九州保健福祉大学薬学部 茨木 寛之
福岡大学薬学部 杉本 隼人
福岡大学薬学部 重冨 菜々
福岡大学薬学部 増満 浩平
代表取締役 中村 守男
九州保健福祉大学薬学部 茨木 寛之
福岡大学薬学部 杉本 隼人
福岡大学薬学部 重冨 菜々
福岡大学薬学部 増満 浩平
向上心と思いやりを持ち、
自ら行動できる人を育てる。
Profile
中村 守男(なかむら もりお)
有限会社八幡西調剤薬局 代表取締役
2000年に福岡大学薬学部卒業後、チェーン薬局へ勤務。 2006年「有限会社八幡西調剤薬局」に入社し、薬剤師として薬局現場で働きながら、人事・採用・教育などマネジメント業務に尽力。2018年には同社代表取締役に就任。現在は薬局経営に加え、公的な事業として薬局系ラジオ番組の運営や、薬学部等での講演活動も行っている。また、NPO活動にも携わっており、市民向けの健康づくり講座など主催。
八幡西調剤薬局ウェブサイト https://yph.jp/
社会人6年目の分岐点
福岡大学薬学部を卒業し、チェーン薬局に3年間勤めた後、経営の視点を学ぶために中小企業の薬局に転職しました。夜間対応も行う小児科の門前薬局で、薬剤師は私1人。薬局の近くに住み、夜8時に閉めた後も必要に応じて薬局を開け、患者さん対応をしていたため、熟睡はできなかったですね。 そんな毎日が続き、体調を崩したことが分岐点になりました。
この薬局での経験は、医療の問題や自分自身のあり方を考えさせてくれました。待ち時間の長い昼間を避けて夜中に受診する人がいることや、子育てをしながら働いているお母さんの苦労など、日中だけでなく夜間も対応していたからこそ見えてきたことがあります。
一番大きな気付きは、薬剤師の提供する情報が、患者さんの生活スタイルに合っていなかったことです。例えば、離乳食が1日2回の子に「1日3回食後で飲ませてください」と平気で言ったり、吐き気で食事が摂れない子に「この薬は必ず食後で服用してください」と説明したり。患者さんたちが抱えている背景はそれぞれ違うのに、僕はそれを全然考えずに薬の情報を伝え、相手を困らせていることがあった。社会人6年目になって、そのギャップに初めて気付き、考え方が変わりました。
医療と患者さんの隙間を埋めるためにNPOを設立
このまま自分がもし独立して薬局を経営したら、患者さんのことを考えない薬剤師になってしまう。連日の夜間対応で体調も崩していたし、独立するのは一旦置いて、医療と患者さんの隙間を埋めるような仕事をしたいと思ったことが、NPOを立ち上げたきっかけです。医療の立場から子育てを支援するために、健康づくり講座やワークショップ、講演活動などを行ってきました。当時は、八幡西調剤薬局でパートの薬剤師をしながらNPOの活動をしていました。仕事の割合は半々くらい。NPOの活動がメディアでも紹介されて注目されるようになると、また見える世界が変わってきました。外に向けて発信している自分の足元はどうなのか。勤めている薬局で、発信していることが実際にできていないのはカッコ悪い。NPOを通じた社会的活動だけではなく、所属している薬局の現場を良くしていきたいと思うようになったんです。
それで、当時の社長に「これからは薬局のマネジメントを行う仕事にも携わらせてください」と直談判して、社員を後方から支える役割に切り替えていきました。
薬局運営のプロを育てる
うちの会社では「薬局運営のプロになる!」という経営ビジョンを掲げ、2025年までに全員で達成することを目指しています。このビジョン実現のために、行動していることが三つあります。一つ目は、調剤業務を効率化して余白を生み出すこと。二つ目は、その余白で新しい健康サービスを作ること。三つ目が、この効率化と業務改革に挑戦する人財になることです。
効率化というのは、例えば5人でしていた業務量の仕事を、4人 で処理できるようになることです。1人分効率化できたことを余白と呼んでいます。健康サービスとは、薬を作って渡して終わりではなく、食事や睡眠、運動など健康に関わる全てのことを薬局が網羅していくことを意味しています。そして、この二つに挑戦できる人のことを「薬局運営のプロ」と定義しています。
ただし、新卒で入社した1年目の社員には、まずは自分の専門的知識を高めて、一人前の薬剤師を目指してほしいと考えています。そして、一人前になった後、新しいことに挑戦する。それぞれのキャリアでやるべきことは違う。自分の目の前にあることを努力できる人ほど、早くキャリアアップできると思います。
目標を数値化して行動していく
2018年から社長業を継ぎ、まずやり始めたのが調剤機器の導入です。人がやらなくてもよいことは機械に任せ、業務の効率化を進めてきました。今後は効率化によって生まれた成果を、KPI (重要業績評価指標)や有給取得率など、できるだけ数値で表現したいと考えています。
目標を達成するために重要なのは、いつまでにどんな状態にするのか、時間軸と達成度を明確にすること。人はやっぱり、具体的な数値が見えないと動く気にはなれないんですよ。実際にできるかできないかよりも、同じ目標に向かってチームや個人が何をすべきか考え、役割を認識し、行動することが大切です。
やってみてもうまくいかないときは、行動を変化させてみる。これを繰り返し続けていくしかない。目標達成に向けて、現状とゴールの差を埋める行為こそが人の成長なんです。
ただし、薬局としての本来の目的を忘れてはいけません。それは、患者さんの健康的な生活を支援すること。目標を数値化してしまうと、ついつい目的が忘れ去られてしまいますが、それはダメです。仕事の効率を上げる目的は、目の前にいる患者さんに、薬を含めた健康サービスを提供すること。業務を効率化してできた余白を活用し、これからも新しい健康サービスの提供に取り組んでいきたいです。
人こそがすべて
八幡西調剤薬局が求める人物像は、向上心と思いやりのある人です。向上心を持ち知識を深め、資格を取得して専門性を高めることと同時に、患者さんの背景をしっかり見てアドバイスができる思いやりも伸ばしてほしいと思っています。
例えば、小児科で1日3回咳止めの薬を出すときは、お母さんが子どもの咳で夜中に寝ていない可能性が高い。すごく疲れている様子だったら、薬を渡した後にひと言、 「これでお母さんも寝れると思いますよ」と言える人になってほしい。相手の背景にも気を配り、思いやりを言葉にして伝えられる人を求めています。
僕は学生を採用するとき、専門知識だけでなく人間力を見ますね。人間力に優れている人は、将来伸びる可能性が大きいから。面接では、学生時代のアルバイトや、どんなことに困って、それをどうやって解決したのか聞くことが多いです。
薬学生には、学生時代にたくさん人と関わってほしい。アルバイト、ボランティア、サークルなどを通して、自分とは全然志向の違う人や、薬学部以外の人と一緒に物事を成し遂げる経験をしてほしいです。恋愛もすごく大事ですよ。人間力というのは人を思いやることだから、相手のことを想像しないといけない。 そして、その想像力を培うためには、自分の知らない分野の人と関わる経験が大切だと思います。
薬学部生へのメッセージ
薬学生が「将来に向けて何をするか?」は、学年によって大きく変化します。4年生以下は高学年に比べてたくさん時間があります。できる限り薬学部以外での交流(アルバイト、サークル、ボランティアなど)を通じてさまざまな人と関わり、薬学以外の視野を広げてください。一方、5年生は就活を意識する時期。視野を広げることも重要ですが、それ以上に自分の業界分析を行い、「薬剤師としての働き方」を徹底的に研究してください。そして、家族、先生、先輩の意見だけに流されることなく、自分の目で職場見学に出向き、将来の先輩や同僚を見極めてほしいと思います。頑張ってください!
有限会社八幡西調剤薬局 代表取締役 中村 守男
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九州保健福祉大学薬学部 茨木 寛之
将来の展望と今やるべきことに対して明確なビジョンがあり、柔軟な考え方とブレない軸がある会社でした。会社と社員が一丸となって成長できる環境が、ここにはあると感じました。
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福岡大学薬学部 杉本 隼人
薬局運営のプロになるために効率化を図り、余白を作って健康サービスを提供する考えに感銘を受けました。挑戦という意識面を重視し、社員のことをしっかり考えてくれる会社だと感じました。
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福岡大学薬学部 重冨 菜々
患者さんの生活や背景について、真剣に考える機会になりました。今の行動が未来につながるので、自分も普段の行動を意識して過ごしたいと身が引き締まる思いでした。
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福岡大学薬学部 増満 浩平
薬剤師としての専門性に加え、人間力も併せ持つ人になりたいと心から感じたインタビューになりました。チームの一員として、ぜひ働いてみたいと思える薬局です。
編集後記
薬剤師としてあらゆる経験を重ねてきた中村氏から、最も出た言葉は「思いやり」でした。調剤業務を淡々と行い、1日何十枚こなした、という数にフォーカスするのではなく、一人ひとりの生活の背景を想像し、そこにどんな貢献ができるかを考える。関わりの"質"を何よりも大事にしていました。薬局運営のプロという、より高い視座を磨き、薬剤師としても、人としても、志高く成長したいと思う学生には、チャレンジできる素晴らしい環境が待っています。
株式会社DoraPharma 新井 裕明・田代結城